レミフェンタニル急性耐性の話

レミフェンタニル=アルチバは麻酔科医ならお世話にならない日はないくらい、大事なお薬です。
そんなアルチバさんですが、先日自分が担当した症例で1γくらいの高用量投与中、急に全く鎮痛効果がなくなってしまった症例がありました。

そんなわけで気になって調べてみると、アルチバさんの急性耐性や痛覚過敏に関する報告や文献は思ってた以上に沢山あってびっくり!
なのでその辺り勉強してみたことをまとめてみますね。

急性耐性・痛覚過敏の発生機序

まずは急性耐性・痛覚過敏の発症機序について。
これははっきりしたことは分かっていないみたいですが、NMDA受容体への作用や、オピオイド受容体の内在化が関係しているみたいです。

レミフェンタニル急性耐性

痛みを感じる経路・抑制する経路をざっくり説明します。
まず手術による侵襲や炎症が加わると脊髄後角にあるNMDA受容体が活性化され、これが痛みの促進作用を持ちます。

対して、オピオイド受容体に作用するオピオイドによって痛みの抑制作用があると言われています。エンドルフィンなどの内因性オピオイド、フェンタニル、レミフェンタニル、モルヒネなどの外因性オピオイドがあります。

急性耐性や痛覚過敏の発症機序は一つにオピオイドがNMDA受容体を活性化する作用を持つのではということ。
また、オピオイドに高用量で曝され続けると受容体のダウンレギュレーションが起こり、効果減弱が起こるのではないか、というような機序のようです。

ではひとつ文献紹介。

Remifentanil—Acute Opioid Tolerance and Opioid-Induced Hyperalgesia: A Systematic Review

このレビューの焦点は以下の4点。

①オピオイドによる急性耐性(acute opioid tolerance:AOT)および痛覚過敏(Opioid Induced Hyperalgesia:OIH)の定義はどうなされているか?
②AOTおよびOIHのメカニズムについて
③本当にレミフェンタニルはAOTおよびOIHを引き起こすのか?
④レミフェンタニルの投与量を減らしたり、調整を行うことでAOTおよびOITを防げるのか?

メカニズムに関しては上記の内容+色々難しそうな話も書かれてました。
ただ、どんなオピオイドでもこの耐性や痛覚過敏といった問題は起こりうるのですが、短時間作用性であり、蓄積性がないため過量投与されやすいレミフェンタニルで一番前面に出やすい問題のようです。
現に、フェンタニル投与やヘロインの継続投与で耐性を生じた報告に関する文献も紹介されています。

AOT/OIHの発症については肯定する報告、否定する報告も含めて色々紹介されていますが、どれもオピオイドの投与期間・総投与量はバラバラですし、併用薬やTCIの使用など影響を与える可能性のある因子も揃えることは困難です。そして痛みを客観的に評価する指標がほとんどなく、結論づけに至るのは困難といった結論になっています。

ただ、やはり肯定的な報告は否定的な報告に比べてオピオイドの投与量が多く、時間も長い傾向にある点や、動物実験ではこの急性耐性を裏付ける報告が多くあることを考慮すると、やはりある程度の高用量・長時間のオピオイド投与を続けた場合には耐性は生じうるのかなと思います。

それと、急激な濃度変化も痛覚過敏への影響が疑われている様子。

なので、ひとまず私たちが出来ることは、必要以上の高用量のアルチバ投与は避けること、手術終了時に漸減すること。これはやって悪いことではないし、なるべく意識した方が良いのかと思いました。

ただこのレビューの中では実際に耐性や痛覚過敏が発症してしまった場合どうするか?という内容があまり書かれていません。発症を防ぐことが出来るかどうかの議論はされているのですが。
一部の記述に、AOTはオピオイドの増量でovercome出来る、との記載もありますが、えっΣ(・□・;)それでいいの??と思ってしまいます。
他のオピオイドをかぶせれば良いのか、そういった検証も今後必要なのかなと。

あとはAOTの発症診断も曖昧かも。どうやって診断してるのかがよくわかんなかった。
まぁレビューなんだから元文献たどれって話なんでしょうけど(^_^)ゞ

まとめ

いずれにしても、私たちはアルチバのない時代の麻酔なんて知らない世代です。
アルチバが出て術中の維持は本当に楽になったみたいです。
でも、そうは言ってもやはり日本より先行してアルチバが広く使用されているアメリカ等ほど、否定的な報告が多い印象です。
今のところ便利だし使いやすい薬なので今後とも末永くお世話になるんでしょうけど、こういった問題も踏まえて不必要な使用は控えるようにした方が良いのかなぁなんて思いました。

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