ダブルルーメンチューブ基本のお話

呼吸器外科手術など、片方の肺を潰さないと手術が出来ない時、わざと片肺換気の状態を作るために使用されているのがダブルルーメンチューブ(DLT)と呼ばれる挿管チューブになります。
DLTは1本の挿管チューブの中身が2本に分かれていて、片方は気管分岐部上、もう一方は気管支まで挿入してそれぞれのカフを調整することで片肺換気の状態を作ることが出来ます。

ダブルルーメンチューブの構造

ダブルルーメンチューブ①

チューブの呼吸器側先端で2本に分かれていて、それぞれのチューブをクランプすることで一方のチューブのみでの換気をすることになります。

手術の部位にかかわらず、左主気管支に青チューブが入るタイプのもの(左用)を使用します。
なぜ左用を使用するかと言うと、右主気管支は上葉へ分岐する気管支までの長さが短いので、青カフを膨らませた時にこの枝を閉塞してしまう危険性が高いためです。

ダブルルーメンチューブの挿入後は気管支鏡を使ってその深さや位置を確認します。
白チューブから気管支鏡を挿入して分岐部を観察します。青カフを膨らませた状態で下図のようなイメージで見えればOKです。

ダブルルーメンチューブ②

ちなみに、気管支鏡挿入時には左右のオリエンテーションがつかないことがありますが、そういう時は気管軟骨のひだひだを探してください。
ひだが見える側が患者さんの腹側になります。

この状態で青チューブをクランプすれば右肺のみの換気、白チューブをクランプすれば左肺のみの片肺換気となります。

トラブルシューティング

前半でDLTの基本構造を解説したのですが、こんな風に図で描くのは簡単なのですが、なかなかそう上手くいってくれるものじゃないのです。
実際には挿入が上手くいっておらず、思うように片肺換気になってくれないことが沢山あります。
また、挿入直後は上手く行っていても、術中の操作やちょっとした動きでチューブ位置が変わると換気がおかしくなることもあります。

まず、上の図のように、DLTが正しい位置に挿入されている場合。

・白をクランプ→左片肺換気
・青をクランプ→右片肺換気

でしたね。

では、挿入して白カフ・青カフ注入後、次のような聴診所見だったら、どんな状況を想定するでしょうか?

・白をクランプ→左片肺換気
・青をクランプ→両側換気できない
・青カフを脱気して青をクランプ→左片肺換気

この場合、青・白どちらをクランプしても左片肺換気になってしまうわけですから、おそらく白チューブの先端まで左主気管支に挿入されており、チューブ位置が深くなっていることは予想されます。

ダブルルーメンチューブ(深い)

なので、白クランプ時は問題なく左片肺換気が出来ますが、青クランプ時には白チューブ先端は青カフに邪魔されていたり、気管分岐部に当たっていたりで換気できなくなります。
青カフを抜けば左片肺換気になることもありますが、先当たりしていたりすれば、青カフを抜いても換気出来ないこともあります。
そういう場合も、白クランプで左片肺換気が出来るということは、左主気管支に先端は入っているのはおそらく間違いないので、深さが深すぎるのかな?と考えます。

では続いてパターンその2です。

・白をクランプ→換気出来ない
・青をクランプ→両肺換気

この場合、青カフ注入後に青をクランプしても両肺換気が出来るということは、左主気管支と白チューブが交通しているということ。つまりチューブが浅いんです。

ダブルルーメンチューブ(浅い)

白クランプで換気が出来なくなったのは青チューブの先端が気管分岐部に先当たりしているのかもしれません。
これも微妙な位置によって白クランプでも両肺換気できたり、などバリエーションが色々出てきます。

最後に、先日自分が経験したケースの紹介です。

・白をクランプ→右片肺換気
・青をクランプ→両肺換気

まず、白をクランプしたら通常左片肺換気になるはずなのに、逆の片肺換気になってしまっています。ただ、青が完全に右主気管支に入っているとすれば、青クランプ時には左片肺換気になるはずですが、この時は両側の呼吸音が聴取できました。
あれれ?と思いましたが、この時の予測イメージを図にしてみます。

ダブルルーメンチューブ(回転してる)

通常DLT挿管時には初めは青チューブを患者の腹側に向くようにした方が咽頭の解剖に合っていて挿入しやすくなります。声門を越えて勧めたところで左90度回転し、青チューブが左主気管支に向かうようにしています。

おそらくこの状況の時には気管内でチューブの回転が不十分のまま青チューブ先端が右主気管支にかかった状態だったのかと思います。
青をクランプしても両肺換気が出来たのは、青カフが気管分岐部まで達していないのでカフのフィットがなく白チューブのみの換気で両肺換気が出来たのかと。

結局この後は気管支鏡ガイドに再度挿入して、適性位置で固定したところ、上記の状況の時よりも数cm深い位置での固定となっていました。

いくつか失敗パターンを描いてみたのですが、これ以上にちょっとしたカフ位置や先端位置でおかしな片肺換気になったり、術中ずれてしまったりと難しいイメージがとにかく強いです。

麻酔科医にとっては必須の手技なので、色々なパターンのチューブ位置関係を理解するのが大事かと思いますね。

参考書籍:カラー写真で一目でわかる 肺外科手術の麻酔〜ダブルルーメンチューブ、気管支ブロッカーによる一側肺換気の基本とコツ

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