シバリングとシェイキングはどう違う?

研修医の頃によく言われたんですよ。
「発熱患者を診たら悪寒戦慄(shaking:シェイキング)があったかどうかを聞きなさい」って。

これは勿論ちゃんと理由があって、ただの悪寒(寒気)ではなく悪寒戦慄があった場合、細菌感染による菌血症としての特異度が非常に高いからです。

The degree of chills for risk of bacteremia in acute febrile illness.

The American Journal of Medicine (2005) 118, 1417.e1-1417.e6

菌血症に関するとても有名な文献です。
以下のような定義として、菌血症と悪寒戦慄(shaking)の関連について述べています。

mild chills:上着が必要な軽い悪寒
moderate chills:厚い毛布が必要なほどの強い悪寒
shaking:厚い毛布を被っていても身体が硬直して震える状態が続くような悪寒
菌血症の定義:血液培養2セット4本のうち、少なくとも1本で菌検出
       (ただし、菌種から明らかなコンタミネーションと思われるものは除く)

菌血症特異度
つまり、shakingがあった場合の菌血症の特異度は90%を越えるわけですね!

というわけで、shakingは菌血症の重要なサインだということが分かりました。

そんな一方で、私は麻酔科医なので術後の患者さんで時々シバリングを見かけることがあります。

シェイキングとシバリング

このシバリングとシェイキング、なんか同じようだけどどう違うのでしょうか?

いずれの言葉も体の震えによる熱産生運動を示します。
これは体内の中枢温度と実際の体温にズレが生じた時に、実際の体温を中枢温度に等しくするための体の反応です。

体温と中枢温

体温調節中枢のセットポイントが引き上げられ、実際の体温の上昇が追いついていない時に悪寒を感じたり、振戦による熱産生運動は起こります。

そして、なぜ中枢のセットポイントが引き上げられるか?

この中枢温が引き上げられる原因の違いがあります。

シェイキングは細菌感染の炎症によってアラキドン酸カスケードによりPGE2産生増加によって中枢温の上昇が見られます。
感染の炎症によって上図のようにまずは体内の中枢温度が上昇し、それにつられて実際の体温が上昇します。

一方でシバリングは麻薬の影響によるものです。

体温変化-麻薬

麻薬自体は体温調節中枢のセットポイントを広げる作用があるため、手術中で麻酔使用中にはシバリングが起こることはほとんどありません。

ところが手術中には開腹術などで外気に曝される上に、体温調節のセットポイントが広がるため患者自身の体温調節は上手く出来なくなります。

そして術後麻薬の効果が切れるとこのセットポイントが狭まる上に、手術侵襲による炎症でセットポイントは全体的に引き上げられた状態になります。
加えて上記の要因で患者体温は低下していることが多いですから、ここでも中枢温度と実際の体温の解離が生じて、熱産生運動、つまりシバリングが起こるわけですね。

私も初めはシェイキングとシバリングって何が違うんだろう??と思ってたんですけど、よくよく考えてみるとこんな感じで体温調節中枢への影響因子が異なるだけで、起こっている状態としては似たものなのかなと思いました。

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