研修医の頃、救急外来に来た患者さんがCRT-D植え込み後の患者さんで、初めて見たときにはCRT-D??なんだそれ??と思った思い出があります(´-ω-`;)ゞ
なので今日はそんなCRT-Dを私が理解するまでの思考を書いてみようかと思います。
刺激伝導系とペースメーカー
まず以前載せた心臓の刺激伝導系の復習です。
これを踏まえた上で、まずはCRT-Dの話の前に、ペースメーカーについて考えてみます。
ペースメーカーの適応は色々ありますが、洞不全症候群(洞結節が仕事をしない)、房室ブロック(洞結節は仕事をするけれどそのシグナルが伝わらない)など色々ありますね。従来のペースメーカーは右房と右室に1本ずつのリードが置かれていました。洞不全の場合には右房から刺激さえしてあげればそれ以降の伝導は正常なわけですし、房室ブロックなら洞結節での興奮を右房で感知して、それに合わせて心室をペーシングしてあげるという流れです。
ペースメーカーのリードはどこにおく?
最近は右房・右室に1本のリードで済ませる場合もありますが、基本のペースメーカーで必要なリードは右房に1本、右室に1本です。
そしてそれぞれのリードを置く場所は、右房の右心耳、右室の心尖部が主流でした。これは先端がタインド型のリードを挿入する場合に固定性の良い場所として決められています。
では、房室ブロック患者でのペースメーカーとして、心室リードで右室心尖部をペーシングした場合はどうなるでしょうか?
右室をペーシングするので、刺激の伝わり方はこんな感じで右室→左室へと伝わる所見になりそうですね。そしてこの刺激の流れ、どこかで見たことがありますね!
そうそう、左脚ブロックに似た伝導になるわけです。
本来右室と左室がほぼ同時に収縮することでお互いの心室壁が押し合い、しっかりした心拍出を得ることが出来るはずですが、左脚ブロックは右室が収縮してから左室が収縮しますから、なんだかちぐはぐな、息の合わない動きになってしまうイメージですよね。
なので、ペースメーカーでの心収縮は心臓には良いものではなさそうです。つまり、ペースメーカーはブロックの治療としては必須なのですが、心機能に対しては悪くなってしまうということですね。
心機能を良くするためのペースメーカーが、CRT
そんな一方で、ではより心機能改善のために考えられているのがCRT=Cardiac Resynchronization Therapy(心臓再同期療法)になります。
これは従来のペースメーカー刺激での左脚ブロックパターンでの伝導を改善するようになってます。右室が興奮してから左室が興奮するというタイムラグができてしまうのがいけないのであって、それなら右室と左室を同時にペーシング出来れば良いんじゃん!だから左室にもリードを入れちゃえ!っていうノリですね♪
というわけで、左室にもリードが一本増えました(●´艸`)
最初にこの図を見た時、「えっこの左室リードってどこ通ってるの?人工ASD?」と思いましたが、なんと冠静脈洞を通って左室壁にリード先端が埋め込まれてるんだって。笑
右室と左室にリードが入っていれば、それぞれをペーシングすることが出来て、本来の心臓の動きに近い伝導を再現することが出来るようです。こうして心不全の人の心機能を保つための新たなペースメーカーが誕生したわけですね。
これを使えは右房の興奮から心室興奮が始まるまでの時間、そして右室・左室の興奮のタイミングの微妙な調整も出来ますから、患者さんに合わせて少しでも心機能を保てるような設定を組んであげるためのものなわけですね。
そして、心機能低下を持つ患者さんでは、致死性不整脈での死亡率も高いわけで、どうせこんなペースメーカーを埋め込むなら一緒に除細動器もつけてしまえ!というわけで出来たのがCRT-D(両心室ペーシング機能つき植込み型除細動器)ということになりますね。
というわけで、長くなってきたのでこの辺りで終わります。今日も読んでくれてありがとうございました!